赤血球凝集抑制試験の方法と原理について
赤血球凝集抑制試験(HI法)とは
ウイルスは動物の赤血球を凝集する性質を持っている。 血液中に抗体が存在していると、ウイルス抗原が抗体と結合して抗原抗体反応が起こり、赤血球凝集能が抑制される。 この性質を利用して、血液中に抗インフルエンザ抗体がどのくらいできているかを調べることを赤血球凝集抑制試験という。
赤血球凝集抑制試験(HI法)は麻疹、風疹、インフルエンザウイルスなどの抗体価測定に用いられる。
赤血球凝集抑制試験の方法
検体(血清)を倍々に希釈していき、どの濃度まで凝集が抑制されたかを観察し、その最終倍率を抗体価とする。
検体:患者血清(血球吸収処理等の前処理を行う)
前処理済みの検体を希釈(×10、×20、×40、×80、×160、×320・・)し、一定の抗原量のウイルスを加えて反応させる。そこへ赤血球浮遊液を加え、どの希釈倍数まで凝集が抑制されているかを観察する。
この時、赤血球凝集が完全に抑制された最終希釈倍数をHI抗体価とする。
例)×10、×20、×40希釈の検体は凝集が抑制されていたが、×80希釈の検体は赤血球が凝集していた→HI抗体価は40倍
HI抗体価が大きい→検体に含まれていた抗体の数が多い (たくさん薄めても赤血球凝集を抑制できるほどの抗体があるという事)
季節性インフルエンザウイルスの重症化予防の目安はHI 抗体価が40倍以上と言われている。
新型インフルエンザのワクチンの効果についても、ワクチン接種後にHI抗体価が40倍以上なっていれば効果ありと言える(季節性インフルエンザと同じ考え方で通用すれば)。
ウイルスの赤血球凝集能利用した検査方法なので、赤血球を凝集する性質の無いウイルス(単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルスなどのヘルペスウイルス群に属するウイルス)はHI法により抗体価を測定することが出来ない。