本日のテーマはボルズィ錠です。
ボルズィ錠は、2025年11月27日に発売されたオレキシン受容体拮抗薬です。オレキシン受容体拮抗薬は、ベルソムラ、デエビゴ、クービビック、そしてボルズィ錠の4種類となりました。
ボルズィ錠の有効成分はボルノレキサント水和物で、不眠症に用いられる薬剤です。2つのオレキシン受容体を遮断するため、DORA(デュアルオレキシン受容体拮抗薬)と呼ばれています。
ボルズィ錠は、Tmax(最高血漿中濃度到達時間)と消失半減期が短い設計が特徴であり、服用タイミングや相互作用の管理が安全性と服薬設計に直結しやすい薬剤です。RMP(医薬品リスク管理計画)資材があるため、服薬指導での説明整理にも活用できます。
この記事では、ボルズィ錠の特徴と、他のオレキシン受容体拮抗薬との違いを整理します。
ボルズィ錠(ボルノレキサント)とは
ボルズィ錠はオレキシン受容体拮抗薬。覚醒系を弱め、生理に近い睡眠移行を目指す。

不眠症治療では、入眠だけでなく、翌朝の持ち越しや日中機能への影響が常に問題になります。従来の睡眠薬は、作用点がGABA(ガンマアミノ酪酸)系が中心となりやすく、転倒やせん妄、依存といった問題が議論されてきました。
そこで、覚醒を支えるオレキシン系を弱め、睡眠へ移行させるという発想からDORA(デュアルオレキシン受容体拮抗薬)が登場し、睡眠への移行をより生理に近い形で促すことが期待されました。オレキシン神経系は正常な睡眠覚醒パターンの維持に重要で、オレキシンAとオレキシンBが下流のオレキシン受容体を刺激して覚醒を維持します。
ボルノレキサントは、この結合を阻害して覚醒から睡眠へ移行させると考えられています。ボルズィ錠は、こうしたDORAの中でも、Tmaxや消失半減期が短いという特徴を持つ薬剤として整理できます。
なお、「ボルズィ」という名称は、インタビューフォームで「一般名のボルノレキサントと、眠りを表すZZZから命名した」と説明されています。

製品・薬剤の特性
3規格により、相互作用と肝機能に合わせた用量調整ができる。

ボルズィ錠には2.5mg、5mg、10mgの3規格があります。基本用量は5mgですが、2.5mgは相互作用や肝機能を踏まえた調整用として使用され、10mgは症状により増量するときの上限側の選択肢になります。
錠剤の識別として、2.5mgは白色素錠で識別コードがT1、5mgは白色で割線入りの素錠でT2、10mgは微黄色の素錠でT3とされています。薬剤師としては、規格と外観の一致確認を、残薬整理や取り違え防止の場面で活かしたいところです。
作用機序
OX1受容体とOX2受容体を遮断し、覚醒から睡眠へ移行させる。

ボルズィ錠はDORA(デュアルオレキシン受容体拮抗薬)であり、2つのオレキシン受容体を遮断します。標的はオレキシン受容体で、OX1受容体とOX2受容体は覚醒を維持するシグナルの要所にあり、ここが刺激されると目が冴え続けやすくなります。
ボルノレキサントは、オレキシンAとオレキシンBがOX1受容体およびOX2受容体へ結合するのを阻害し、覚醒から睡眠へ移行させると考えられています。理解度チェックのクイズでも、作用機序として正しいのは「OX1とOX2の両方を阻害」であることが示されています。
薬物動態・服用タイミング
短いTmaxと半減期を踏まえ、食事と服用時刻を最適化する。

ボルズィ錠の特徴は、Tmax(最高血漿中濃度到達時間)と消失半減期のどちらも短いことです。健康成人に10mgを空腹時に単回投与したデータでは、Tmaxは約0.5時間、消失半減期は約2.13時間と示されています。
この速さは、作用発現が早く、翌朝への眠気の持ち越しが少ないという利点につながると整理されています。一方で、食事は吸収のタイミングを遅らせます。健康成人で食後投与では、Tmaxの中央値が約1時間遅延したことが示されており、食事と同時、または食直後の服用は避けることとされています。
同じ「寝る前」でも、夕食直後に飲むのと、ある程度時間が空いてから飲むのでは、作用発現の速さが異なり得ます。薬剤師としては、「就寝直前」だけでなく「食事と同時・食直後を避ける」をセットで伝えることが、服薬指導の軸になります。
また、食後服用が続くと「効きが遅い」と感じてしまう点も、注意点として挙げられています。生活パターンを聞き取り、タイミングのズレが評価に影響していないかを丁寧に確認したいところです。
用法・用量
中等度CYP3A阻害薬併用や中等度肝機能障害では2.5mgに調整する。

通常、成人にはボルノレキサントとして1日1回5mgを就寝直前に経口投与し、症状により適宜増減します。ただし、1日1回10mgを超えないことが明記されています。増量時は傾眠など副作用が増える可能性があるため、観察しながら慎重に進め、改善に伴って減量に努めることとされています。
用量調整で重要なのが2.5mgです。中程度のCYP3A阻害作用を有する薬剤と併用する場合は、血漿中濃度が上昇して副作用が増強するおそれがあるため、1日1回2.5mgとされています。中等度の肝機能障害の患者でも同様に、1日1回2.5mgとされています。
重度の肝機能障害の患者には禁忌とされており、「患者さんの肝機能について確認が必要」とされています。また、他の不眠症治療薬と併用したときの有効性と安全性は確立されていません。
禁忌・併用禁忌・相互作用
強いCYP3A阻害薬は併用禁忌で、監査で最優先に確認する。

禁忌は、本剤成分に対する過敏症の既往、重度肝機能障害のある患者、そして特定薬剤との併用禁忌です。併用禁忌は、強いCYP3A阻害作用によりボルノレキサントの代謝が阻害され、血漿中濃度が顕著に上昇するおそれがある薬剤群です。
具体的には、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル含有製剤、エンシトレルビルフマル酸、コビシスタット含有製剤、セリチニブが挙げられています。
データとして、イトラコナゾール併用ではCmaxが約2倍、AUCが約12倍に増加したとされています。併用禁忌のチェックは、処方監査の最優先事項になります。
併用注意として、中程度のCYP3A阻害薬であるフルコナゾール、エリスロマイシン、ベラパミルなどが挙げられます。この場合は併用禁忌ではなく、2.5mgへの減量が必要とされています。
グレープフルーツジュースもCYP3Aを介して作用を増強させる可能性があるため、飲む習慣がある患者には注意が必要です。逆に、リファンピシン、カルバマゼピン、フェニトインなどのCYP3A誘導薬は、血漿中濃度を下げて効果を減弱させるおそれがあります。
アルコールは精神運動機能の相加的低下を生じる可能性があるため、服用時の飲酒は避けるよう指導が必要です。
安全性・副作用
眠気、悪夢、睡眠時麻痺、記憶のない行動があれば早めに相談する。

本剤の影響により、眠気、注意力、集中力、反射運動能力などが低下することがあり、危険を伴う機械操作の適否を慎重に判断し、眠気が出た場合は運転などをしないよう指導することが求められます。
副作用として、傾眠、悪夢、睡眠時麻痺などの報告があります。眠っている最中に起き上がって活動し、翌日その出来事を覚えていない、金縛りがあるといった症状が出た場合には、医師や薬剤師に相談するよう伝えることが示されています。
ボルズィ錠にはRMP資材があり、患者に説明すべき内容がまとめられているとされています。説明の抜けや言い回しのブレを減らす目的でも、資材を活用する前提で服薬指導を組み立てたいところです。
ボルズィ錠とオレキシン受容体拮抗薬の比較
最短半減期で翌朝残りにくい一方、タイミングと併用薬で体感が変わる。

ボルズィ錠は、DORA(デュアルオレキシン受容体拮抗薬)としてベルソムラ、デエビゴ、クービビックと同じ作用機序のグループに入ります。オレキシン受容体拮抗薬の中で最も短い半減期を持つのがボルズィ錠であり、消失半減期は約2.13時間と示されています。
翌朝まで眠気が残ると困る方に使われることが多くなるかもしれない、という整理がされています。一方で、薬物動態が短い設計であるからこそ、服用タイミングや併用薬の影響を受けたときの体感や評価が変わり得る点も、服薬設計では意識しておきたいところです。
ボルズィ錠の監査・服薬指導のポイント
処方監査は用量・併用薬・肝機能、指導は服用タイミングを徹底する。
処方を見たら、用量と併用薬を必ずチェックしましょう。用量と併用薬のチェック、そして肝機能のチェックが必要とまとめられています。まずは5mg、2.5mg、10mgのどれが処方されているかを確認し、そこから相互作用や肝機能配慮の意図が反映されているかを逆算します。
服薬指導では、就寝直前に服用すること、食事と同時や食直後を避けることを、短く繰り返して定着させます。食後服用が続くと「効きが遅い」と感じてしまう可能性がある点も、生活状況に応じて補足するのが実務的です。
安全性の観点では、眠気が出た場合の運転回避や、悪夢や金縛り、夜間の記憶がない行動などの症状が出た場合に相談につなげる導線を作ります。RMP資材の活用は、説明の過不足を減らす具体策として、推奨されています。
ボルズィ錠に関してよくある質問(Q&A)
発売日、分類、規格、用量調整、相互作用と副作用をQ&Aで確認する。
Q1. ボルズィ錠はどんな睡眠薬ですか。
A1. ボルズィ錠は、不眠症に用いられるオレキシン受容体拮抗薬で、DORA(デュアルオレキシン受容体拮抗薬)です。
Q2. ボルズィ錠はいつ発売された薬ですか。
A2. ボルズィ錠は、2025年11月27日に発売されたオレキシン受容体拮抗薬です。
Q3. ボルズィ錠はどのオレキシン受容体に作用しますか。
A3. ボルズィ錠は、OX1受容体とOX2受容体の両方を遮断します。
Q4. ボルズィ錠はいつ飲むのが正しいですか。
A4. ボルズィ錠は、就寝直前に服用します。
Q5. ボルズィ錠は食後に飲んでもいいですか。
A5. ボルズィ錠は、食事と同時または食直後の服用は避けることとされています。
Q6. ボルズィ錠を食後に服用するとどうなりますか。
A6. ボルズィ錠は、食後投与でTmaxが約1時間遅延したとされており、効きが遅いと感じることにつながり得ます。
Q7. ボルズィ錠にはどの規格があり、基本用量はどれですか。
A7. ボルズィ錠は2.5mg、5mg、10mgの3規格があり、基本用量は5mgとされています。
Q8. ボルズィ錠2.5mgはどのような場合に使われますか。
A8. ボルズィ錠2.5mgは、中程度のCYP3A阻害薬と併用する場合や中等度の肝機能障害の患者で用量調整として使用されます。
Q9. ボルズィ錠の併用禁忌薬にはどのようなものがありますか。
A9. ボルズィ錠は、イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、クラリスロマイシン、リトナビル含有製剤、エンシトレルビルフマル酸、コビシスタット含有製剤、セリチニブなどの強いCYP3A阻害薬と併用禁忌です。
Q10. ボルズィ錠で説明しておきたい副作用は何ですか。
A10. ボルズィ錠は、眠気、悪夢、睡眠時麻痺などが報告されており、夜間の記憶がない行動や金縛りが出た場合は医師や薬剤師に相談するよう伝えることが示されています。
まとめ
ボルズィ錠は短い半減期を持つ国産DORAで、相互作用と服用指導が重要。

ボルズィ錠は、国産のデュアルオレキシン受容体拮抗薬(DORA)です。
Tmax(最高血漿中濃度到達時間)は約0.5時間と早く、消失半減期は約2.13時間であり、同じ系統の薬剤の中では最も短い半減期を持つことが特徴です。
相互作用の観点では、イトラコナゾールやクラリスロマイシンなどの強力なCYP3A阻害薬とは併用禁忌です。
一方で、中等度のCYP3A阻害薬との併用では、1回2.5mgへの減量が必要とされています。
処方を確認する際には、用量と併用薬を必ずチェックすること、そして肝機能の確認が重要です。
服薬指導では、就寝直前に服用すること、食事と同時や食直後を避けることを必ず伝えましょう。
これらは、作用発現や体感に直結する重要なポイントです。
また、RMP(医薬品リスク管理計画)資材の活用がおすすめされています。
副作用として、悪夢や睡眠時麻痺(いわゆる金縛り)が起こりうることをあらかじめ説明し、そのような症状が出た場合には、自己判断で中止せず、医師に伝えるよう指導しておきましょう。

