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現在使用可能な睡眠薬の種類
高齢化社会、ストレス社会の現代において睡眠薬を必要としている人が増えてきています。正しく使えば安全性が高く有効な薬ですが、今なお睡眠薬は危ないものと思っている方が少なくありません。正しく理解していただけるよう睡眠薬の特徴についてまとめました。
現在国内で使用することができる睡眠薬には以下の6種類があります。
- バルビツール酸系
- 非バルビツール酸系
- ベンゾジアゼピン系
- 非ベンゾジアゼピン系
- メラトニン受容体作動薬
- オレキシン受容体拮抗薬
バルビツール酸系睡眠薬の特徴
バルビツール酸系睡眠薬(非バルビツール酸系睡眠薬も含む)は依存や耐性が起こりやすいため服用量が増えてしまうという傾向があります。高用量のバルビツール酸系睡眠薬を服用すると呼吸抑制が起こりやすくなるため、最近ではあまり使用されていません。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬の特徴
ベンゾジアゼピン系睡眠薬(非ベンゾジアゼピン系睡眠薬も含む)はバルビツール酸系睡眠薬よりも依存や耐性が起こりにくく、また、作用する部位が大脳辺縁系に限られているので、高用量で服用した場合でも呼吸抑制を起こすことがほとんどありません(呼吸中枢は脳幹)。
ベンゾジアゼピン系とバルビツール酸系睡眠薬の作用機序の違い
ベンゾジアゼピン系もバルビツール酸系も脳内ニューロンのγ-アミノ酪酸(GABAA)受容体複合体のそれぞれの結合部位に結合します。
するとGABA(γ-アミノ酪酸)のGABAA受容体に対する親和性が増加し、GABAの作用が増強します。
GABAは脳内にある抑制系の神経伝達物質で、脳内シナプスのGABAA受容体に結合して塩化物イオン(Cl–)の細胞内流入を促すことで神経活動を抑制するという働きがある。
GABAの受容体への作用が増強すると、Cl–チャネル開口に伴って細胞内のCl–が上昇。抑制性神経機能が亢進され眠りにつきやすくなります。
GABAA受容体に作用して睡眠を促すという作用は同じですが、ベンゾジアゼピン系とバルビツール酸系睡眠薬の作用機序には大きな違いがあります。
ベンゾジアゼピン系はGABAA受容体を介してのみ作用するので、生体内のGABA量を超えた作用が起こりませんが、バルビツール酸系は高用量になるとGABAA受容体を介さず直接Cl–チャネルに作用するため、鎮静作用が過剰になる危険性があります。
この違いにより、安全性の面から主流となったのはベンゾジアゼピン系(非ベンゾジアゼピン系含む)睡眠薬です。