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ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)の除菌療法についてのまとめです。
ヘリコバクター・ピロリの概要
- ヘリコバクター・ピロリはグラム陰性桿菌。
- 萎縮性胃炎、胃潰瘍、胃がんの発生に関与している。
- 日本には約3500万人のピロリ菌感染者がいると推測されている。
- ヘリコバクター・ピロリの発見は1983年。
- 感染率は高齢者ほど高い。
- 小児期に経口感染すると考えられている。
ヘリコバクターピロリ除菌療法の適応症
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症
- ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
診断と検査
侵襲的検査(内視鏡使用)
迅速ウレアーゼ試験(RUT)
内視鏡で採取した胃の組織を尿素含有試薬と反応させて調べる。
鏡検法
内視鏡で採取した胃の組織を顕微鏡で調べる。
培養法
内視鏡で採取した胃の組織からピロリ菌を分離培養して調べる。
非侵襲的検査
尿素呼気試験(UBT)
検査薬(13C-尿素)を用いて呼気中の(13CO2)の割合を測定する。感染している場合は13CO2のが呼気に多く含まれる。
抗体測定法
血液や尿を用いて抗H.pylori抗体を測定する。
便中H.pylori抗原測定法
便中のH.pylori抗原の有無を測定する。
除菌判定の検査には尿素呼気試験(UBT)と便中H.pylori抗原測定が推奨されています(ガイドライン)。
治療薬
一次除菌
- クラリスロマイシン(200) 1回1錠または2錠
- アモキシシリン水和物(250)1回3カプセル(錠)
- 下記のいずれかのPPI
ランソプラゾール(30)1回1錠(カプセル)
オメプラゾール(20) 1回1錠
エソメプラゾール(20)1回1カプセル
ラベプラゾール(10)1回1錠
ボノプラザン(20)1回1錠
1.2.3の3剤を1日2回朝夕食後に7日間服用。
1.2.3が組み合わされたパック製剤がよく処方されます。
一次除菌用パック製剤
- ランサップ400、ランサップ800(武田薬品工業)
- ラベキュアパック400、ラベキュアパック800(エーザイ)
400、800はクラリスロマイシンの1日量の違い。実際400mgでも800mgでも除菌率に差はないのでほとんど400で処方されます。
ランサップとラベキュアパックの違いはPPIの種類。ランサップは武田薬品なのでタケプロンが、ラベキュアパックはエーザイなのでパリエットが入っています。
二次除菌
一次除菌が不成功と診断された場合、二次除菌が行われます。
- メトロニダゾール(250) 1回1錠
- アモキシシリン水和物(250)1回3カプセル(錠)
- 下記のいずれかのPPI
ランソプラゾール(30)1回1錠(カプセル)
オメプラゾール(20) 1回1錠
エソメプラゾール(20)1回1カプセル
ラベプラゾール(10)1回1錠
ボノプラザン(20)1回1錠
クラリスマイシンをメトロニダゾールに変更し、1日2回朝夕食後7日間服用します。
ニ次除菌用パック製剤
- ランピオンパック(武田薬品工業)
- ラベファインパック
ランピオンパックとラベファインパックの違いはPPIの種類。ランピオンパックにはタケプロン(ランソプラゾール)が、ラベファインパックにはパリエット(ラベプラゾールが入っています。
一次除菌と二次除菌を受けると97~98%は除菌が成功します。
三次除菌
保険外診療です。
PPI+アモキシシリン+グレースビットの三剤併用療法が用いられることが多いようです。
ピロリ菌除菌薬の副作用
下痢・軟便が最も多い。ひどくなければ7日間継続。発熱や腹痛、血便を伴う下痢であれば中止して受診を勧めます。
他には味覚異常、肝障害など。
禁煙は必須です。喫煙により除菌成功率が下がるという報告があります。
また、メトロニダゾールとアルコールの併用で悪酔いする可能性(ジスルフィラム-アルコール反応)がありますので禁酒も必要です。
除菌成功率を上げるには
ピロリ菌除菌の成功率を挙げるには以下の注意点を守りましょう
- 飲み忘れの無いように1日2回、7日間きっちり服用する
- 禁煙をする
- 禁酒する
ガイドライン
H. pylori 感染の診断と治療のガイドライン 2009 改訂版
学会